Sugar+Spice2(1)

 前作とは相当に別物ですよね。というのは、響くんを初めとする主要な人たちのやり方生き方みたいなのが、和真くん達とはだいぶ違うよね、という意味においてなんだけれども。

"響「どうだろ、先輩は卒業しちゃうしな」
俺やさなは受験かもしれないし、遠野がずっといるかは分からない。
薫子「あら、そこは嘘でも『ずっと一緒に見られる』って言ってあげるとこじゃないの」
響「ずっと一緒とは限らないだろ。だけど――」
「歌さんたち見たろ?」
「何年たっても、一緒に見られない年があっても、その気になればまたみんな集まれるんだから」
だから、ともう一度ゆっくりと口にして。
「そうしようって思えるくらい、楽しく過ごしていればいいんじゃないかな」
人生楽しんだ者勝ち。不安に思った分だけ損をする。"

"その俺の言葉に、決して納得したわけではないだろうけど。
風花「うん、そうだね」
そう言って、風ちゃんが俺の手を強く握ってきた。
「……もうちょっと、このまま」
小さくつぶやくその声に、俺も手を握り返して。
その俺たちの頭の上で、花火が大きく広がって、散った。"
("祭の終わり"より)

 数年後、今ここに集まった人たち全員が集まる機会があるかどうかといえば、確信をもってそうだとはなかなか言い切れない。もちろん、個々の人たちが一緒に過ごしたり顔合わせたり集まったりする機会はいくらだってあるだろう。でも「皆で」集まるためにはそのための理由やモチベーションや機会が必要だし、それは個々の人同士が仲が良かったり好き合ってたりすることとは全然別の問題だ。
 うつろっていくものに名前と入れ物を与えてあげると、うつろってゆくものをその場に留めることができる。「関係」っていうのは例えばそういうもので、逆に言えば、「関係」を曖昧なままにしていると、集まる理由も機会も曖昧なままだということでもある。
 "……もうちょっと、このまま"――風花ちゃんのこの言葉は、つまるところ今ある響くんとまわりの人達の関係が、定まってないし、お互いよくわかってないままであることの表れでもある。もちろんこれは彼ら彼女らの中でも屈指のダメ人間かつ微妙な事情を抱えている風花ちゃんのお言葉であって、皆そうなのだと敷衍出来る話でもないのだけれども、でも例えばさなさんだってオトメカイセキで似たようなことを言ってたりしてさ*1。さなさんも微妙に人間力が低めというかチキンなので、その辺りは風花ちゃんに似てるなあと思うところもあったりするね、というのは余談。

"祭「なぜあたしを呼ばなかった、準備から片づけまで何でもやったのに! って悔しがってますよ」
そう言って笑う祭ちゃん。あの姉妹、仲が良いんだか悪いんだか。いや、良いんだろうけど。
玲音「んー。じゃあいくらか持って帰れるものは包む?」
祭「むー、お姉ちゃんに、そこまでしてもらうのも悪いですよ」
玲音「じゃあその分、今度フォレスタに行った時に見返りがほしいって伝えて置いて」
正しいギブ&テイク。こうして人は食事で繋がっていく。"

"優「今度、またなにかお礼用意しないと。なにがいいかなー」
玲音「あはは、そんなの気にしなくていいわよー。あたしが勝手にやったんだし」
信九郎「いや、そういうわけにもいきませんし」
そう言って、たまにどこかで手に入れたのか、珍しい食材を持ってきたりとか、遊びに付き合ったりとかそういう事があった。"
("いきなりタイ料理パーティー!"より)

 ここに集まってる人たちって、直接は特に繋がりのないベーコン数2くらいの組み合わせも多くてさ、例えば薫子さんと銀河さんはあんまり接点ないし、玲音さんと信九郎くんなんかもそれなりに他人同士の距離感でもある。ただそれはそれとして飯を持ち寄って一緒に旨いものを食えばそれは良いことなのであって、ここで言っているギブアンドテイクとは、例えばそういうことだ。
 ギブアンドテイクという、ある意味でその場限りの関係を作って、互いを結び合って、それによって繋がる。数年後に関係がどうなっているかなんてのは、それは全然別のこと。

*1:「このままってのもいいよね」とか