猫忍えくすはーと

 「お手紙」と来た! 即死級のパワーワードですよもう。食らったら死ぬしかない。

"たま「〜〜♪」
ゆら「姉は真剣に悩んでおるのだぞ。何をしている、たまよ」
たま「お手紙書いてるの」
ゆら「文(ふみ)で我らの想いが届くのなら苦労はしない」
たま「お手紙もらったら嬉しいもん」"

"たま「グスッ、グスッ……どうして来てくれなかったの」
春希「頑張ったんだよ? 頑張ったんだけど、何が書いてあるのかわからなくて……」
たま「あああああああ〜〜〜〜〜〜んっ!」
春希「だよねぇ!? ごめん、本当にごめんね!」
たま「ひく、ひくっ……たま、いっしょうけんめいお手紙書いたのに」
春希「ごめんね僕の頭が悪くてごめんね!?」
たま「……ごしゅじんさまのばか〜」
打つ手なしで、とにかくたまちゃんの頭を撫でながら平謝り。"

 そして春希さんが、ここでたまちゃんを怒ったりしない人で良かった、本当に良かったのです。春希さんが、押しかけ忍者であるところのゆらさんたまちゃんの存在に納得してるわけじゃなくても、それはそれとして拗ねてる小さい子に対して頭ごなしに叱りつけたりする人でないということ、実に有難いことでした。拝みたい。
 かようにゆらさんもたまちゃんも無邪気だし、春希さん側にしても根が包容力のある人なんだけど、いわゆるコミュニケーション能力というのか、お互いの考えをすり合わせたりとかが上手くはないですね。そんなイノセントな彼らに対して大人の立場から親切にしてくれる人がいないのは、なかなかどうして見ていておっかなくもある。

"二人とも寝るのすごい早いし。
春希(話したりするのは無理でも、せめて寝顔くらいは……)
主従とかそういうの通り越して、気分は完全にお父さんだ。
「9時、9時かー……どうしよう、おみやげくらいは――」"

 ゆらさんたまちゃんを養うためにしたことが肉体労働系バイトである辺り、なんとも世知辛いです。春希さんは学校の後のバイトで疲れ果てちゃってて、授業中は起きてるのもしんどいから教師からはガチで怒られるし、それでもあんまり気にかけてくれる友達も居なさそうに見えるし。家賃2万3千円のいい物件が見つかったと喜んでも、身元保証人の問題で弾かれる。
 普通の高校生だから経済力もないし、それでいてあんまり周囲や家族からサポートが受けられる感じでもない。そんな状況じゃ普通の猫を飼うのだって楽じゃないものを、猫忍者と来ればなおのことだ。それは全くもって正論なんだけど、どうにもこうにも世知辛いことではある。

"ゆら「ハルキ殿は一体、なんのためにこの学校というところに通っておられるのでしょうか?」
春希「……難しいこと聞くね」
ゆら「あるばいとは、労働の対価として報酬を得るという意味でわかるのですが」
たま「ほんとだー? おねえちゃん賢い」
ゆら「みゃーん♪ なんのなんの」
たま「がっこうなんて別に行かなくていいのにね?」
遅かれ早かれ、二人がたどり着くべき疑問だったのかもしれない。
「がっこうよりも、たまと一緒にひなたぼっこしたり、にゃんにゃんして遊んだ方が楽しいよ」"

"春希「さっそくっ!? 学園で勉強するのは、将来のために必要なんだよ」
たま「将来って?」"
"たま「たまと遊ぶよりもがっこうの方がいいの?」
春希「……たまと仲良く一緒に生きていくためには、ちゃんと頑張って学校に通わないとダメなんだよ」"

 いやね、これはほんとに悩ましい話ではあるわけです。学校行くのが春希さんにとって「正解」なのかは分からないよね。そりゃ高等教育受けて高いお給料貰えるお仕事に就いて二人を養って、というのは一つの道なのだけれど、そんなこと言っても現状で既にバイト漬けで学業は疎かになってしまっているわけだし。
 そういうのって結局は周囲の手助けとかセーフティネットとか働いてくれないとどうしようもないんだろうけど、そもそも猫忍者自体が戸籍のない存在であるから容易じゃない。そもそもたまちゃんは字が読めないっていうのが、化外の民感出してて激しい*1
 物語の最後でようやくその「周囲」の存在が見出されるのだけれども、それも相当アングラ感漂う存在であって*2、かなり危うい印象ではある。
 春希さんたち三人の結びつきはとても愛おしいもので、幸せになって欲しいのだけれど、先行きはなかなかどうして不透明だよなあ。良き作品であったとは言えるけれども、なかなか悩ましい読後感でもありました。これからのあの子達の道行きが明るいものであって欲しいなと祈ってます。まあ、それしかできないですね。

*1:なお字の読み書きができないたまちゃんがどういう「お手紙」を出したかについては、プレイしてのお楽しみ

*2:あの人達、もうちょっと手続き的正しさを重視してくれないですかね……