ラズベリーキューブ(1)


 何をさておいてもまずは、女の子の表情が豊かなのが素敵でねー、という話をせねばなるまい。

 OPムービーを見たらそのあたりの雰囲気は少し分かるかもしれない。とりわけ印象深かったのは、期末テストの後の、ファミレスでの悠さんの楽しそうな笑顔かな。

悠「…………(ジーッ)」
悟「あのさぁ? そんなに凝視されると、気になって食べるのに集中できないんだけど」
悠「おいし? パフェ」
悟「美味いよ! いいからそっとしておいてくれっての」
悠「トロ顔になってるもんね。はうーん、おいしいー……って感じ」
悟「そこまでじゃないだろ。このメロンが思った以上に甘くてビビったのは認めるがな」
悠「ふぅん、ネタとかじゃなくて本当に好きなんだ」
悟「ネタってなんだよ」
悠「べっつにー」

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 あんまり普段スクリーンショットとか貼らないけど、ここはやっておきたかった。この悠さんの笑顔がさ、ただ楽しそうで嬉しそうなのがすごーく好きで。

 悟さんが(顔に似合わず)パフェや甘い物が好きだと知って笑う悠さんのその表情について、悟さん自身はからかわれてるんだと受け取ってるんですけどね。

 でもここには、考えてたお出かけの行き先が首尾よく見つかった嬉しさがまずある。そして実際のとこはそれだけじゃなく――悠さん本人にはあんまり自覚はなかっただろうけど――悟さんの好きなものを知ることができたこと自体の嬉しさとか、彼が幸せそうに食べてる姿を見ることの嬉しさとか、お出かけのときにもきっと悟さんが喜んでくれるだろうという想像への嬉しさとかあれやこれやの気持ちがあって、あんなに楽しそうににこにこしてたんだろう。

 悟さんは男のコっていうよりは男のヒトっぽいひとだし、悠さんの気持ちに一分の隙もなく寄り添えるようなタイプの人ではない。だから、悟さんや悠さんの心が勝手に思い描いた世界が、現実にすべて実現するわけではないのはそれはそうだ。ペシミズムとかじゃなくて、まあそういうもんだよね、という程度の話として。

 でも別にそんなん関係ねーですよね、とも思うんですよ。そんなこと心配する前に、心は勝手にふたりで楽しいお出かけをする未来を描きだすものだし、笑顔は勝手にこぼれるものだろうし。いつも気ままな悠さんのあの混じりけのない笑顔は、心配や思惟なんて置き去りにした速度で咲いているのだろうと。


悠「え!? っと、えーーっと……ちょっと待ってね」
胸に手を置いた悠が、すうはあと息を整える。
「あ、アタシは、あんたのこと解雇する気はないっていうか……」
「シュミッターとかインストのこともあるし! ウチの親父はネット関係からっきしだもん。ハイテク担当としてもアテにしてるしさ」
「お客さんも悟のこと気に入ってると思うし、あ、アタシも、手の回らないとことかフォローしてもらったり……」
「話し相手がいると結構楽しい、みたいなとこもあったり……」

 もちろん自然にこぼれ出てくるものだけじゃなくて、"胸に手を置い"て、一歩立ち止まって選ばれる言葉もまたよいものです。こことかね、たぶん一晩かけて言葉の準備をしてきたんだよねと思うと感慨深くもある。なにせ悠さんって普段はあんまりそういう、言葉を用意してきたりするタイプじゃないよねと思うわけで、まっすぐな言葉が眩しかった。