金色ラブリッチェ-Golden Time-(2)

これだな。
これが、いわゆる『ダチ』って距離感だと思う。
何を言ってもいい。何を言っても許される。
まあ異性なら多少感覚もちがってくるけど、特に同性の友達ってのは、そうあるべきだと思う。
(…)あいつにとって、これくらいの相手は……。
央路「なあ理亜、明日、ちょっと時間くれないか?」
理亜「んー? なんで」
央路「いや、ちょっとさ」
付き合いの古さから言って、こいつが最適だわな。

 理亜さんと居て楽しそうなのはとても良いことなんだけど、とはいえ、このときの央路くんに、おいおい待て待て、と思ってしまうのもそれはそれで仕方のないことではあるとは思う。いや別に央路くんが(とても雑な言い方をすれば、いわゆる)鈍感ムーブを取ることが罪だというのではない。そもそも理亜さん自身それを望んでいる部分だってあるのだし、それを傍からどうこう言う筋合いのことでもない。


 ただ、それでも絢華さんは理亜さんの特別なただ一人になりたくてなれなかったのだし、だからある意味、央路くんは絢華さんの嫉妬の対象でさえあり得る1。そしてもちろん理亜さんにとっての絢華さんは、これから央路くんへの気持ちを二番目に預けようとしている相手であって。「シルヴィがよかった」ってぼやく理亜さんが、前作のエルさんや玲奈さんのときと違ってああすることを決めた過程は、理亜さん自身語ろうとしないし、ああだこうだ言うのも野暮というものだろうから止めておくけれども。ともあれそこには、少し遠い共感とか、愛情と祝福とか、一抹の諦念とか、あれこれの沢山の感情が詰まっているんだろう。

 二人はもとよりお互いのことを大事に思っててね、というのは央路くん自身もすぐに気付いたことだったけれども、実際それだけで済む話でもない。お互いに抱えてるそれなりに複雑な気持ち――もちろんそれは理亜さんと絢華さんが互いを大事に思うことをなんら妨げはしないのだが――には、かように央路くん絡みの部分が少なくない。それに全然気付かない央路くんがお前らもっと距離を縮めようぜ云々というのは、さすがに苦笑いがこぼれる話ではある。まあ、控えめに言っても大きなお世話といったところ。


 だからまあ、央路くんは余計なこと言わなくてよかったですねという気持ちにはなるし、理亜さんの"「バカでドジでヘタレで口うるさくてぐじぐじして」2"なんて憎まれ口にも、苦笑しながら頷くよりない。いや実際央路くんはすごく聡いし気も回せる人なんだけど、理亜さんやシルヴィさんと比べられちゃうと、相対的にはそういうことになっちゃうんだよなあと。



  1. もちろん絢華さんにとって一番のそれは、シルヴィさんではあるのだけれども。

  2. まあこの憎まれ口、央路くんは一切気付かずスルーしてるわけですが。あまりに華麗なスルーすぎて読んだときちょっと笑ってしまった。