猫忍えくすはーと2

下野動物園は下野公園の敷地内にある、国内有数の規模を誇る動物園だ。

 多少ずらしてはいるにせよ、春希さん達の行き先としてこういった固有名詞が――しかも都立の動物園の名前が出てくることには、若干の驚きのようなものがあった。前作にそういうものがあったかどうか明確には思い出すことができないんだけど、多分なかったような……はて、どうだったか。

 マヤさんと律さんが増えて、ついでに言えばあと六忍ほどがおっつけやって来るとかで、春希さん家という空間は、ある種の広がりを得たのだと思う。前作は「両親と住んでるお家にこっそり猫忍者を住まわせる」要素が強かったし、だから春希さんとゆらさんたまさんの暮らしは、あやうさを感じさせるところが大きかった。それが本作に至っては、庭に掘っ立て小屋建てて新しく来た子達を住まわせてるわけで。

 ただ、そんな風に形が変わっても、忍者という存在の根本的な浮草ぶりがどうにかなっているわけではない。むしろ彩さんが言うよう、傍からは、春希さんがアウトローの度合いを増したと見られかねない部分もある。

 だから春希さん達が下野公園という場所で遊ぶことにはちょっと独特のニュアンスがあるんだけど、それはけしてネガティブなものじゃない気もしてて。危ういのは危ういままなんだけど、それでもやっぱり良いことですよねと。



たま「お説教? たま別にいじわるしてないよ。マヤがおそいかかってくるんだもん」
春希「お説教なんかしてないって」
たま「おにいちゃんは、マヤのこともちゃんと叱るべきだと思うの」
春希「……二人と違って、マヤちゃんはただ預かってるだけだから」
たま「よくわかんない」

 こういうとこもなあ、ただ感嘆するばかりでした。別に春希さんだって「うちの子」「預かってる子」なんて綺麗に態度を使い分けてるわけもないんだけど、それでもそう説明するよりないこともある。言葉選びが的確なのに、だからこそ色々と取りこぼしてしまうようなコミュニケーションも、それでいてセンシティブさに淫しないところも、ホント好きですね。