LOVE³ -ラヴキューブ-

壱成「えー、ちゃんとって……」
「……めちゃくちゃ可愛くなっててわからなかったよ」
和花「えー、ほんとですか? ほんとにー?」
「そっかー可愛くなれたかー、えへへ~♪」
「わたしも、そう言ってもらえるように色々と頑張りましたので♪」
「先輩にそう言ってもらえて、ほんとにうれしーです♪ えへへ~♪」
お酒のせいか、少し赤くなった頬を緩ませて、可愛らしい仕草でグラスの氷を鳴らす。
……可愛い。
垢ぬけたかと思えば昔と同じあどけなさも残っていて、見た目とのギャップがめっちゃ可愛い。

 このあと壱成さんは三人分ちゃんと褒めさせられるわけだけど、その褒め言葉自体はそこそこ大雑把というか、どこが可愛いとか具体的に語るわけではない。でもその代わりに壱成さんときたら、心の中だけで具体的に語って悶えてるんですよこれが。

 「ただ可愛いって褒める」のと「どこが可愛いかを語る」のは当然意味合いが違ってて、久しぶりに再会した友人だとか仕事上の付き合いだとかって間柄なら、後者をやっちゃうのはちょっとセクハラみたいになっちゃうリスクもある。

 いやそりゃ伊織さん達も具体的に褒めてもらえたらそれはそれで嬉しいしセクハラだなんて思わないだろうけど、でもホントに壱成さんが具体的にどこそこが可愛いとか詳しく言い出したら普通に照れるだろうし、そしたら変な空気になって収拾つかなくなりそうでね。

 だからまあ、伊織さん達側が「あたし可愛い?」って聞いて壱成さんが「可愛い」って答えるのは、傍から見たら茶番なんだけど、当事者からしたらお酒の席という言い訳を使いながら、ここまでは踏み込めるかなみたいなラインを探ってる、的な側面は多少ないわけではない。でも別に壱成さん側も伊織さんたち側も、相手の可愛さに/可愛いって言ってもらえることに悶えてるのを全然隠しちゃいないわけで、結局は駆け引きじみたものなんて何も成立してないのがゆるやかで好きなんですよな。ありがたいことだと思う。


和花「彼氏の彼女っていうのがすでに矛盾してて……」
「かと言って同棲仲間っていうのもヘンですし……?」
聖「でも伊織ちゃんと和花ちゃんと、あたしが恋人ってのもヘンだし……?」

 伊織さん達は最初から女の子同士互いに好意や尊敬を向けあっているけれど、ことさらその理由1が語られるわけでもないし、互いの関係がどういうものかについてもとくだん定義されるわけでもなく、実際それで誰も何も困らない。別に何も考えてないわけじゃないし、むしろそれなりに生真面目な人たちなんだけど、結局はなんか別にどうでもいいよねそんなの、っていう大雑把なとこに落ち着いちゃえるのは、二人きりじゃなく四人だからこそのご利益という部分もあるよね多分。和花さんがやってることどう見てもただの聖人なのに「欲しいものがある女はえげつないですよ?」とか言いだすところとかホント笑うし、らしくて良かったですね。



  1. 伊織さんのここがこうだから特別に好きなんですー、みたいなやつ。もちろん伊織さんのここが可愛いんですー、っていうのはあるけど、それは好きな「理由」とはまた別なので。