三国ハヂメ"放課後カノン"

 やっぱ大好きだなあ、この人の作品。


"「な――ななちゃん あのっ…/早…っくない? 展開が…」「え? ダメ!?」"
"「だって花織みてるとムラムラするんだもん あたしだけ?」"(ねてもさめても)

 かわいい/ムラムラする/抱きしめたい、相手へのそんな気持ちをシンプルに"好き"と呼んで抱きしめあうと、幸せな気持ちになれる。"好き"って言葉は、ともすれば逸ってはしる感覚に確かな形を与えてくれる。あくまで相手へ抱くプリミティブで強い感覚を大事にしつつ、それを日々の続いていく感覚の中に落としこんでいく手つきは、そんな言霊の働きによってこそなされるのではないかと思います。



 んで、表題作の"放課後カノン"。
 三国氏の漫画には珍しく?淡い画面づくりなのだけれど、その中で「つかまる」「つかまえる」そういう繰り返しの運動が示されててさ。でも、つかまった/つかまえたのに、そこにはどこか淡さの中に溶けていくようなイメージが保たれていて、会長と桜木さんが触れ合うことで、溶けていくのかそれとも居場所を見つけるのか、分からなくなる感じがあります。初めてキスを交わすシーンとか、ほんとなんだろ、なんて言って良いのかわかんなくなる。空に溶けてて。
 でもまあ、そういうの全部ひっくるめて、"好き"でいいんだろうと思うんです。いい加減ではあるんだけどさ、でもそれでいい。それが正しい。遠慮も会釈もなく二人をセットとして扱ってくれる生徒会のひと(名前不明)の存在も地味にありがたい。



 あと、過去作の子達の出てくる掌編も相変わらず大変よいです。小毬ちゃんと雪緒ちゃんのカップルはほんといいなあ、好きだなあ。そしてののかちゃんにおかれましてははっちゃけ度が更に増してはいませんか。