南部くまこ"聖クロス女学院物語"一巻

"「ああ、あの子たちと同じクラスになっちゃったらどうしよう!」
受験組の子たち、なんだか怖いよぉ〜!"(3章より)
"「あの子、すごーい……!」
苦労して木によじのぼってる似あわない姿を想像して、わたしはあははっ!と笑った。"(7章より)
"「最初に見つけた子はすごいわね。なんでしたっけ、あおやぎさん?」
「あおやなぎさん。ねぇ、ママ、ういろうっていうの食べてみたい」"(8章より)

 なにかや誰かが気になることってのはそれ自体には色がついてないものだと思われて、相手のことをなんだかすごいとか怖いと思ってみたり、(同じ中学1年生なんだけど、陽奈さんは青柳さんと違って小学校からの持ち上がりなので)先輩として後輩を見守るような気持ちになってみたり、意外な姿に驚いてみたり、彼女の名前と共に覚えた聞いたことのない食べ物のことが食べてみたくなったり(いいですね!)*1、そらもう色んな「気になり方」のカタチがある。
 それは別にどの気持ちが中心にあるというのでもなくて、ただ単に色々あるよねというだけの話だと思うのだけれど、ある時そんな風に積み重ねられたふわっとした気持ちを貫き通すように、青柳さんのちょっと大仰なくらいの言葉が陽奈さんのもとに訪れるのが、不意に打たれるような驚きでもあり、こそばゆい嬉しさでもある。

"「とにかく、松本さんには神秘をきわめる素質がありますわ。あのときから、お友だちになれたらいいなと思ってましたの」"(13章より)

 いやもう、どこもかしこも素敵さに溢れる作品でした。目次のデザインなんかも可愛らしくて、kindleで読んだのだけれど、本の方も欲しくなってしまう感じ。既刊が三巻あるらしいので、まとめて買ってしまおう。